2013年5月28日

Letter from England (William Morris)

 皆さんこんにちは。ロンドンから南のサセックスに行く途中ケント州を通ります。行きがけに寄り道をして依然から行きたかったウィリアムモリスのRed House(レッドハウス)を訪ねました。 この家は150年前にモリスの結婚のお祝いに友人の建築家、フィリップウェッブが設計し彼らの新居として建てられました。
 家の素材は産業革命当時に大量に生産された赤レンガを使用。当時の家の主流はシンメトリーにシンプルにすっきりとしたデザインのものでしたからレッドハウスは屋根の形状も家の形もとても奇妙なため建築されたころはとても話題になりました。モリスはこの家を大変気に入り新婚の5年間をここで暮らしました。
 丸い屋根は有名な井戸です。中庭の井戸は今は使用されていませんが当時は生活用水でした。
モリスはこの家でアーツアンドクラフト運動を起こし家には多様なアーティストたちが集まっていたそうです。
家と庭は一体でなくてはならない。庭は暮らしを支える食物を生み出す場であり心を癒し喜びを与えるもう一つの部屋なのだとモリスは考えました。彼はイギリスに生息する原種の植物たちを愛し当時の流行だったハイブリッド種(雑種)を嫌ったそうです。実際彼が行った数々の講演のなかで流行にとらわれず本来そこに暮らしていたものを大切にしイギリスらしい庭を作ろうと呼びかけていました。
庭が生み出す食物を食べるための野菜畑やハーブ畑はいまでも健在です。モリスの庭は私が想像していたよりずっと小さいものでした。彼が派手な外来種を嫌いイギリスに生息する草花だけを育てた当時のまま野趣にあふれた素朴な庭でした。
 新婚当時、きっと妻のジェーンとそぞろ歩いたであろう薔薇のアーチ。今年のイギリスの5月はものすごく寒いので薔薇はまだ固い蕾のままでしたがきっと満開のときはロマンティックでしょうね。
フィリップウェッブの設計図もしっかり残っていました。外観より中はずっと小さく居心地よく作られていました。
 モリスとウェッブがガラスに書いた絵は花や鳥など自然がモチーフ。150年たった今も健全です。
モリスたちはこの家に5年しか住みませんでした。妻のジェーンがこの田舎での暮らしを寂しがったことが理由だったそうです。訪ねる前はどれほど田舎にあるのかしらと思っていましたが150年後の今は回りにはびっしりと家が立ち並んでいました。150年の間にずいぶんと様変わりをしたのですね。
レッドハウスはケント州の中でもロンドンに近いので通勤圏になっています。モリスのロマンティックな庭からお隣の壁が見えてしまいました。彼が生きていたら何と言ったかしら。

あれこれ想像が膨らみます。